お子様の肌はデリケート
お子様の肌は、まだ発達途中にあるため、大人に比べてとてもデリケートです。それに免疫機能も不完全なので、治療にあたっては特別な配慮を要します。
また、お子様に特有の皮膚症状が少なくありませんし、個人差も大きいので、しっかりと診察した上で、お一人お一人に合った適切な診療を行います。
早めにご相談ください
小さなお子様は、自分の症状をうまく言葉で伝えられないことが少なくありません。
そのため、気づいた時には、ひどい状態になっているケースもしばしばです。
保護者をはじめとする近くの大人が、お子様の皮膚の変化に気づきましたら、早めに相談にいらしてください。
小児によくみられる皮膚疾患
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 水いぼ(伝染性軟属腫)
- 乳児脂漏性湿疹
- 手足口病・水ぼうそう・リンゴ病(伝染性紅斑)などのウイルス性疾患
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(のうかしん)」と称し、皮膚への細菌感染によって発症します。虫刺されやあせもなどを掻きむしることにより、爪などに存在していた細菌が感染し、水疱や膿疱が形成され、それが破れじくじくしてきて、さらに掻きむしることにより、手を介して細菌をばらまき、じくじくした病変があっという間に全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれます。
自分の他の部位や他の子供達にもうつる疾患です。特にアトピー性皮膚炎のお子様は皮膚のバリア機能が低下しているために、とびひにかかりやすいので要注意です。
治療は、患部を石鹸のあわで優しく洗い、シャワーなどでしっかり洗い流すことがとても大事です。そして、抗菌剤を含む外用剤を塗布し、乾くまで覆っておき、触れないようにします。初期に抗菌剤を内服することにより炎症をおさえ、必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬内服により痒みをおさえ、掻きこわしによる拡大を防ぎます。とびひは、ひどくならないうちに治療を始めると、より早く治せます。
水いぼ(伝染性軟属腫)
とびひは細菌が原因でしたが、水いぼはウイルスが原因です。放置しておくと、増数増大しますが、免疫ができれば、いつかは自然に消えます。しかし、治癒までの期間は個人差があり、その間に夏を迎えると、プールで感染を広げてしまう可能性もあり、結局は治療を始めることも少なくありません。
プールで感染することが多いのですが、水を介してではなく、皮膚同士の接触やビート板の共有が感染の原因となります。
治療は、ピンセットでつまみ、内容物を出す方法が一般的です。
つまむので、痛みを伴いますが、麻酔のテープを貼付することにより痛みを軽減させることもできます。数が多くなるとお子様の負担も大きくなるので、数が少ないうちにとることをお薦めします。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎のお子様は、皮膚のバリア機能が低下するため、見えないような細かな傷からウイルスが入りこみ感染しやすいため、普段から保湿にこころがけましょう。
乳児脂漏性湿疹
生後2~3ヶ月くらいまでの乳児は、ホルモンの影響もあり、皮脂の分泌が過剰になる傾向があります。
皮脂の過剰な分泌によりおこるトラブルが脂漏性湿疹です。
おでこや頭部、耳の周囲、股、腋の下など皮脂腺の多い部位にできやすく、湿疹はかさかさしたものから、じくじくしたもの、分厚い黄色がかったかさぶたが付着したものまで様々です。
乳児期によく見られる一過性の変化なので、正しいスキンケアで改善もみられますが、湿疹化したときは、ステロイド剤や抗真菌剤(皮膚の常在菌のマラセチアという真菌が悪化因士ともいわれているため)などの外用治療を必要とします。
水ぼうそう
水ぼうそうは「水痘・帯状疱疹ウイルス」による感染症です。
感染すると、約2週間の潜伏期間を経て、発熱と共に、全身に少し盛り上がった赤い斑点が出現し、すぐに水ぶくれになります。周りに少し赤みをおび、水ぶくれや少し黄色がかった膿疱などが混在します。頭皮や口腔内にも生じ、全身に散在します。
治療はウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤を内服します。すべての発疹がかさぶたになるまで学校や幼稚園・保育園はお休みします。
「水痘・帯状疱疹ウイルス」の初感染による「水ぼうそう」と、その後体内に潜伏した同ウイルスが数十年後に再活性化し発症する「帯状疱疹」は同じウイルスが原因です。
まだ水ぼうそうに罹ったことがなく、免疫がないお子様が、大人の帯状疱疹の発疹に触ると感染し、「水ぼうそう」として発症することがあるので注意が必要です。
手足口病
手足口病は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどの感染により発症します。
感染経路は、唾液による飛沫感染や糞便のついた手指を介する経口感染や発疹からの接触感染などです。感染してから3~4日で発症し、手のひらや足の裏に割線に沿った長円形の小さな水疱を認め、口腔内や太ももや膝にも出現します。
発熱は経度で、特効薬などはなく、症状に応じた治療で1~2週間で治癒します。
乳幼児に多く、夏に流行します。集団生活をしている施設などで集団感染が起こりやすいため要注意です。
まれに大人にも感染し、お子様より重症化することもあります。
りんご病(伝染性紅斑)
りんご病は、微熱などの風邪のような症状が先行した後、両頬に平手で打ったような赤い斑が生じ、その後うでや太ももにうっすらと赤い網目状・レース状の紅斑がみられるようになります。学童期に多く、冬から春にかけて流行します。
原因はヒトパルボウイルスB19というウイルスによる主に飛沫感染です。
発疹が出現したころには感染力はすでに無いといわれています。
治療は特効薬などはなく、症状に応じた治療で治癒します。
妊婦さんなどにうつると、胎児に影響を及ぼすこともあり、注意が必要です。